金持ちと品位まったく無関係 神戸 未来明子

当然の話だ。
この句を読んだ瞬間「衣食足りて礼節を知る」という諺が頭に浮かんだ。

生活が苦しくて腹が減って腹が減ってたまらないときに食べ物を差し出されると、礼を言うのも忘れてその食べ物に飛びついてしまう。
そんな状況になれば誰でも生きる本能が優先するのは当たり前で、恥ずかしいことでもなんでもない。
人間は、生活に余裕ができて初めて礼儀や節度をわきまえられるようになる。『衣食足りて礼節を知る』 という諺はそういう意味である。
しかし、現実は、むしろ逆で、衣食が満ち足りれば足りるほど、人間性が劣化して礼節を忘れてしまうのではないかと思うことが多い。
人並み以上に学力優秀で裕福なはずの高級官僚が、職権を悪用して業者に賄賂をせびったり、国民の税金を食い物にしたり、自分の怠慢で起こした不祥事の責任を部下に押し付けたりなどはその典型で、どうしてそういう浅ましいことができるのかと不思議に思うほどである。
冒頭の句はこの部分に鋭く視点を当てたに違いない。