たくあんをかむ音響く一人ぼち(他作)

作者は老後の一人ぼちか、単身者の一人ぼちかは分らない。
つつましく、たくあんをおかずに夕食をすると、静まり返った部屋で『バリバリ』とたくあんをかむ音だけが左右の耳から容赦なく入る。
そうすると、『俺はやっぱり一人なんだ』と自覚を迫られたようで、『孤独の夕闇に突き放たれた寂しい気分』ということだろうか?
ちょっと暗く書き過ぎたが、同じたくあんの音をテーマにしたものでも優雅な気持ちになる俳句があるので紹介すると、
『たくあんの波利と音して梅開く(俳人加藤楸邨作)
(以下説明の抜粋)
「『波利』はハリと読むのかそれともパリか。後者の方が実際の音には近いが、この場合にはあえてハリと読むべきだろう。
たぶん作者は、『波利』と意識的に漢字で書いて、パリという音をうしろに漂わせながら、ハリの音に軽やかに遊んでいるのである。その結果『梅ひらく』がこの音と優しく響き合う。
たくあんと梅の花がこんな形で結びつけられるのを見ることに、詩を読むだいご味もあるといえる。」
私も漬物は好きだががおいしいかどうかは『歯ざわり』の良し悪しによるところが大きいと思う。日常食べる漬物で、たくあんは「パリポリ」で好き。大好きなのはなすび漬の皮をかんだ時の歯触り感。キューリ漬は水分が多過ぎ「ギュギュ」の感じがイヤ。