包帯を巻けぬところに深いキズ(他作)

このまま読んでしまうと、「当たり前ではないか!」ということにしかならないので何を言いたいのか表現を変えてみよう。
私がとっさに読み替えた句は『自分史の書けぬところに古いキズ』だ。
最近は自費出版ブームであり、その中でも自分史が多いと聞く。私の手元にもこの3月末に定年退官された元上司から贈られたものが1冊ある。
自費出版は本にする素材(内容)と出版に必要な金さえあれば誰でもできる。しかし、自分史を発刊し自分の生きて来た道を行動面・心理面併せて公にするとなれば社会に対する恥ずべき行為=いわゆる大きな傷=があったのでは書けない。
細川頼之漢詩に『人生五十功無きを愧ず』という詩があった。自分史を書くにあたっては地位、名誉、功績は不要である。最も大事なことは後ろ指をさされるような生き方をしていないことである。一定の地位名誉を得た人が自分史を残す場合が多いがそういう人の記録はアチコチニにたくさん残っている。むしろ平々凡々と生きて来た人こそ『自分史』を残すことに意味があると思う。冒頭の句を勝手に「自分史」に読み替えコメントしたが的外れでしたらご容赦。