手ぶらでも寄れてその上母がいる(他作)

『母親ほどありがたい存在はない』ということを詠んだ句だ。
何の気も使わず普段着で手ぶらで寄れるところが実の母親の良い所だろう。手ぶらの『手』は単に何も手土産を持って行かなかった『手』だけではない。母親の顔を見た瞬間からは手土産を持ち帰る『手』に化ける。田舎に行って野菜や米をもらうのは当然だろうが、母親だけだとついつい甘えて冷蔵庫の中まで覗いて手を伸ばし『お母さんこれ消費期限切れだよ』とか言ってちゃっかり土産にする娘もいる。これには実の姉妹でも『いい加減にしなさいよ!』という気になる。ましてや義姉妹でも同じ場にいると、『非常識』のそしりは免れない。
冒頭の句は元気で実家で一人暮らしている母親の存在への感謝を詠んだ句のようだ。